北九州文化 角打ちとは


酒屋の店先で飲むことを「角打ち(かくうち)」という。

北九州には、この角打ちができる酒屋がたくさんある。市内には約340店の酒類販売店があり、そのうちコンビニを除く酒店数は280店、これら酒店のうち平成30年角文研調査によると94軒で角打ちができるのだ。

これ以外にも、常連だけを相手にひっそりとやっていたり、店主の気が向いたときだけ開けるという店もあるから、市内で角打ちできる酒店は、潜在的に120軒程度あるものと推測される。

これには北九州工業地帯の歴史が関連している。

1901年の八幡製鉄所の開業をきっかけとして北九州には多くの労働者が集まった。彼らにとって、疲れた体を癒し明日への英気を養うために、酒は不可欠だった。

とりわけ、三交代で働く工員達にとっては、いつでも酒が飲める場所はありがたい存在だった。夜勤明けの興奮した体と気持ちを静める場所として、職場と家庭の間で意識を切り替える空間として、角打ちは機能してきたのである。

時の流れとともに伝統的な酒屋は減少し、毎日角打ちで一杯ひっかけて帰るという客も減ってきた。

しかしこのマップにあるように北九州の角打ち文化を伝える店もまだ多く残っている。それぞれに個性のある酒屋で、そこでしか味わえない空間が広がっている。

ぜひ一度、本物の角打ち文化を体験してみてはどうだろう。 (北九州市立大学 教授 松永 裕己)


*2018年11月現在の情報です。